香港の移転価格税制
近年の動向
2022年11月29日更新
香港の租税条約のネットワークは急速に拡大させてきており、日本とは2014年に二国間APAを締結している。 なお、APAについては原則二国間又は多国間のAPAを前提としているが、場合によってはユニラテラルAPAも申請可能である。 また、2014年9月には自動的情報交換の枠組への賛同を表明し、2018年に移転価格税制が改正され、BEPS行動13に基づいて移転価格文書化規定が整備された。法的拘束力のないものの、税務当局の法令解釈や実務について語られているDIPN(The Departmental Interpretation and Practice Notes)も随時公表されている。
基本情報
①税務当局
Inland Revenue Department (IRD)
②移転価格税制の課税の対象
国内外の関連者間取引。関連者の判断に際しては特段の数値基準は無く、持ち分や実質から判断して支配関係にあれば関連者とみなされる。
③移転価格文書化義務
BEPS行動計画13に従った形で、香港のローカル法により移転価格文書の準備義務が定められている。
【ローカルファイル】
適用年度:2018年4月1日以降
作成期限:香港法人の会計年度終了の日から9ヶ月以内
適用対象:小規模事業者、国外関連取引規模が限定的な場合等に関する免除規定あり。
準備が無い場合のペナルティ:50,000HKD又は100,000HKDの罰金
【マスターファイル】
適用年度:2018年4月1日以降
作成期限:香港法人の会計年度終了の日から9ヶ月以内
準備が無い場合のペナルティ:50,000HKD又は100,000HKDの罰金
【CbCレポート】
適用年度:2018年1月1日以降
作成期限:最終親会社の会計年度終了の日から1年以内
準備が無い場合のペナルティ:50,000HKD又は100,000HKDの罰金(場合によりこれらに加えて500HKD/日の罰金)
④移転価格算定方法
独立価格比準法(CUP法)、原価基準法(CP法)、再販売価格基準法(RP法)、取引単位営業利益法(TNMM)、利益分割法及びその他の方法。
⑤移転価格課税の時効
6年間(不正の場合には10年)
⑥罰則等
文書化を行っているか否か努力の程度等により25%~75%の加算税が課される。
⑦相互協議・事前確認申請(APA)
2012年4月より事前確認申請(APA)が導入された。APAは原則としては二国間又は多国間APAを前提としているが、場合によってはユニラテラルAPAも申請可能。 租税条約ネットワークは拡大しており、日本との租税条約も締結・発効していることから、課税後の相互協議・APAとも試み易い環境作りが進められている。
⑧使用言語
移転価格文書は中国語又は英語。