新興国取引の増加と移転価格問題の深刻化
近年では先進国のマーケットは成熟し、人口の増加・マーケットの拡大が見込まれる新興国での子会社設立や追加投資が増えています。
一方でインド、東南アジア、南米、アフリカなどの新興国は、移転価格税制執行の歴史・経験が浅い国も多く、租税条約の整備が十分で無いなど制度的にも未熟な国が多いのが実情です。また、研究開発機能を持ち技術特許等の無形資産を所有する親会社が多く所在する日本を含めた先進国と、資源・若い人口・重要の旺盛な市場を持つ新興国とでは利益の源泉や所得の帰属に関する考え方が大きく異なる面もあり、いずれかの国で移転価格課税を受けた場合、相互協議を行っても話がなかなかまとまらないケースが多くなっています。(新興国と先進国での利益の帰属に関する最近の議論に関しては巻末で記載)
相互協議は納税者が申し立てをすれば受け付けてはくれるものの、合意する義務はなく、特にこのような新興国との協議は合意できる可能性が高いとも言い切れないため、特に新興国子会社との取引で移転価格課税を受けた場合には二重課税が解消できるとは限らない点に留意が必要です。