5分で分かる独立価格比準法
独立価格比準法とは?
独立価格比準法は、法令上以下のように定められています(2022/8/15時点。以下同様)。
【租税特別措置法六十六の四2項1号】
※棚卸資産の販売又は購入取引に関する算定方法
イ 独立価格比準法(特殊の関係にない売手と買手が、国外関連取引に係る棚卸資産と同種の棚卸資産を当該国外関連取引と取引段階、取引数量その他が同様の状況の下で売買した取引の対価の額(当該同種の棚卸資産を当該国外関連取引と取引段階、取引数量その他に差異のある状況の下で売買した取引がある場合において、その差異により生ずる対価の額の差を調整できるときは、その調整を行つた後の対価の額を含む。)に相当する金額をもつて当該国外関連取引の対価の額とする方法をいう。)
移転価格税制では、この独立価格比準法を最も直接的な算定方法として理論上優先的に適用すべき算定法と位置づけており、グループ間で取引される製品と同じものが第三者間で取引されていれば、その価格を独立企業間価格とすることを求めています。ただし、法令上適用すべき算定方法に優先順位はなく、いわゆるベストメソッドルールに基づき、実態に応じた最適な算定方法を適用することとされています。
比較可能性の検討ポイント
移転価格税制では、さらにこの第三者間での取引価格との比較の方法についても詳細に規定しており、租税特別措置法関係通達において、比較するポイントとして以下を列挙しています。
(比較対象取引の選定に当たって検討すべき諸要素等)
66の4(3)-3措置法第66条の4の規定の適用上、比較対象取引に該当するか否かにつき国外関連取引と非関連者間取引との類似性の程度を判断する場合には、例えば、法人、国外関連者及び非関連の事業の内容等並びに次に掲げる諸要素の類似性を勘案することに留意する。(平12年課法2-13「二」により追加、平14年課法2-1「五十八」、平22年課法2-7「三十」、平23年課法2-13「二」、平26年課法2-9「二」、令元年課法2-10「三十八」により改正)
(1) 棚卸資産の種類、役務の内容等
(2) 売手又は買手の果たす機能
(3) 契約条件
(4) 市場の状況
(5) 売手又は買手の事業戦略
(注)
1 (2)の売手又は買手の果たす機能の類似性については、売手又は買手の負担するリスク、売手又は買手の使用する無形資産(同条第7項第2号に規定する無形資産をいう。以下同じ。)のうち重要な価値のあるもの等も考慮して判断する。
2 (4)の市場の状況の類似性については、取引段階(小売り又は卸売り、一次問屋又は二次問屋等の別をいう。)、取引規模、取引時期、政府の政策(法令、行政処分、行政指導その他の行政上の行為による価格に対する規制、金利に対する規制、使用料等の支払に対する規制、補助金の交付、ダンピングを防止するための課税、外国為替の管理等の政策をいう。)の影響等も考慮して判断する。
3 (5)の売手又は買手の事業戦略の類似性については、売手又は買手の市場への参入時期等も考慮して判断する。
また、比較する製品等について、差異がある場合には、当該差異が価格に及ぼす影響を調整し、同条件での価格を算定することを求めています。 寄附金規定における時価の考えでは、そこまで詳細な規定は定められていませんが、第三者間で成立した価格という面で、この独立価格比準法で定める価額が最も近い概念であると考えられます。
文責:西村憲人